少し難しい話になってしまいますが、アルミニウムにも色々な合金系統(簡単に言えば、素材・材料の種類)があり、それぞれに特性があり、用途別によって適正があります。
ちなみに当社のインパクトプレス加工で使われているのは純アルミニウム系の1070材を主に使用しています。
合金系統
合金呼称
材料特性の概要
用途例
JIS
A.A
純アルミニウム系
1060
1060
導電材で61%IACS保証。強度を必要とするときは6101を使用します。
ブスバー、電線
1085
1085
成形性、表面処理性が優れ、(曲げ加工には最適)耐食性はアルミニウム合金中最良である。強度は、純アルミニウムであるため低く、純度が高くなるにつれて低くなります。
日用品、銘板、照明器具、反射板、装飾品、化学工業タンク類、、溶接線、導電材、はく地
アルミ缶ボディ
1080
1080
1070
1070
1050
1050
1N30
−
1100
1100
Al純度が99.0%以上の一般用途のアルミニウム。陽極酸化処理後の外観が、やや白っぽくなる以外は上記と同じです。
一般器物、キャップ、印刷板、建材、熱交換器部品
1200
1200
1N00
−
1100に比べて若干強度が高く、成形性も優れる。その他の特性は1100と同じです。
日用品
Al-Cu系
2011
2011
快削合金。切削性が優れ、強度も高いが、耐食性が劣る。耐食性が要求される場合には、6262系合金を使用します。
ボリューム軸、化学部品、ねじ類
2014
2014
Cuを多く含むため、耐食性はよくないが、強度が高く、構造用材として使用される。鍛造品にも適用されます。
航空機、ギャー、油圧部品、ハブ
2017
2017
2024
2024
2117
2117
溶体化処理後かしめを行うリベット用材として常温時効速度を遅くした合金です。
リベット
2018
2018
鍛造用合金。鍛造性に優れ、高温強度が高いので、耐熱性が要求される鍛造品に使用される。耐食性は劣ります。
シリンダーヘッド、ピストン、VTRシリンダー
2218
2218
2618
2618
鍛造用合金。高温強度に優れるが、耐食性は劣ります。
ピストン、ゴム成形用金型、一般耐熱用途部品
2219
2219
強度が高く低温および高温特性が優れ、溶接性も優れるが耐食性は劣ります。
低温用タンク、航空宇宙機器
2025
2025
鍛造用合金。鍛造性良好で強度は高いが、耐食性は劣ります。
プロペラ、磁気ドラム
2N01
−
鍛造用合金。耐熱性があり、強度も高いが、耐食性は劣ります。
航空機エンジン、油圧部品
Al-Mn系
3003
3003
1100より強度が約10%高く、成形性、溶接性、耐食性に優れています。
一般器物、フィン、化粧板、複写機ドラム、船舶用材
3203
−
3004
3004
3003より強度が高く、成形性に優れ、耐食性も良好です。
アルミ缶ボディ、電球口金、屋根板、カラーアルミ
3104
3104
3005
3005
3003に比べて強度が約20%高く、耐食性も比較的良好です。
建材、カラーアルミ
3105
3105
3003に比べ若干強度が高く、その他の特性は3004に類似しています。
建材、カラーアルミ、キャップ
Al-Si系
4032
4032
耐熱性、耐摩耗性に優れ、熱膨張係数が小さいです。
ピストン、シリンダーヘッド
4043
4043
湯流れよく、凝固収縮が少ない。硫酸陽極酸化処理により灰色に自然発色をします。
溶接線、建築パネル、ブレージング皮
Al-Mg系
5005
5005
3003と同程度の強度があり、加工性、溶接性、耐食性がよい。陽極酸化後の仕上りが良好で、6063形材とよくカラーマッチします。
建築用内外装、車輌の内装、船舶の内装
−
5050
5052
5052
中程度の強度をもった最も代表的な合金で、耐食性、溶接性、成形性がよい。特に強度のわりに疲労強度が高く、耐海水性が優れています。
一般板金、船舶、車輌、建築、缶エンド、ハニカムコア
5652
5652
5052の不純物元素を規制して過酸化水素の分解を抑制した合金で、その他の特性は5052と同等です。
過酸化水素容器
5154
5154
5052より強度が約20%高い。その他の特性は5052と同様です。
5052と同様、圧力容器
5254
5254
5154の不純物元素を規制して、過酸化水素の分解を抑制した合金で、その他の特性は5154と同等です。
過酸化水素容器
5454
5454
5052に比べ強度が約20%高い。5154とほぼ同等の特性を示すが、厳しい環境での耐食性は5154より優れています。
自動車用ホイール
5056
5056
耐食性に優れ、切削加工による表面仕上り、陽極酸化処理性とその染色性に優れています。
カメラ鏡胴、通信機器部品、ファスナー
5082
5082
5083に近い強度をもち、成形性、耐食性に優れています。
缶エンド
5182
5182
5082に比べて、約5%強度が高く、その他の特性は5082と同等です。
缶エンド
5083
5083
溶接構造用合金。実用非熱処理合金の中で最も強度の高い耐食合金で溶接構造に適する。耐海水性、低温特性も優れています。
船舶、車輌、低温用タンク、圧力容器
5086
5086
5154より強度が高く、耐海水性の優れた非熱処理系溶接構造用合金です。
船舶、圧力容器、磁気ディスク
5N01
−
強度は3003と同等であるが、光輝処理後の陽極酸化処理で高い光輝性が得られる。成形性、耐食性も良好です。
台所用、カメラ、装飾品、銘板
5N02
−
リベット用合金。耐海水性良好です。
リベット
Al-Mg-Si系
6061
6061
熱処理型の耐食性合金。T6処理によりかなり高い耐力値が得られるが、溶接継手強度が低くなるためボルト、リベット構造用に使用されています。
船舶、車輌、陸上構造物
6N01
−
中強度の押出用合金。6061と6063の中間の強度を有し、押出性、プレス焼入製とも優れ、複雑な形状の大型薄肉形材が得られる。耐食性、溶接性も良好です。
車輌、陸上構造物、船舶
6063
6063
代表的な押出用合金。6061より強度は低いが、押出性に優れ、複雑な断面形状の形材が得られ、耐食性、表面処理性も良好です。
建築、ガードレール、高欄、車輌、家具、家電製品、装飾品
6101
6101
高強度導電用材。。55%IACS保証です。
ブスバー、電線
6151
6151
特に鍛造加工が優れ、耐食性、表面処理性もよく複雑な鍛造品に適しています。
機械、自動車部品
−
6262
耐食性快削合金。2011に比し耐食性、表面処理性が一段と優れ、6061と同等の強度を有しています。
カメラ鏡胴、気化器部品、ブレーキ部品、ガス器具部品
Al-Zn-Mg系
7072
7072
電極電位が低く、防食的クラッド皮材として主用されるが、犠牲陽極作用を利用して熱交換器フィンにも適用されています。
アルミニウム合金の合せ材の皮材、フィン
7075
7075
アルミニウム合金の中最高の強度を有する合金の一つであるが、耐食性は劣る。7072とのクラッドにより耐食性は改善されるがコストが高いです。
航空機、スキーストック
7050
7050
7075の焼入れ性を改善した合金で耐応力腐食割れ性に優れる。厚板、鍛造品に適しています。
航空機、高速回転体
7N01
−
溶接構造用合金。強度が高く、しかも溶接部の強度が常温放置により、母材強度に近いところまで回復する。耐食性もかなり良好です。
車輌、その他の陸上構造物、航空機
7003
7003
溶接構造用押出合金。7N01より強度は若干低いが、押出性がよく、薄肉の大型形材が得られる。その他の特性は7N01とほぼ同様です。
車輌、オートバイ